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駄菓子屋になったのは夕方だった。

駄菓子屋をしてるとよく「なぜ駄菓子屋になったのですか?」と聞かれる、答える前にあちらから「そうか、子供が好きだからでしょう?」と答えられたりする。
その度に思い出して、なぜ駄菓子屋になったんだろ? 俺は子供が好きなんだろか? と考えてみるけど、駄菓子屋になりたいと思った事はきっとない。子供の頃に1、2度は思ったかも知れないけど、いくらでも駄菓子が食べれるとか、駄菓子屋の雑然とした怪しい雰囲気にひかれて、そんな事を少し思ってみただけで、将来駄菓子屋になるなんて想像した事もなかったと思う。

子供が好きかどうか、これもあんまり考えた事がない。もちろん親切ないい子ばかりが来るわけではない。

いつまでもうるさい子、ずるい子わがままな子、性格の優しすぎる子に悪すぎる子。マザーファッカー。チャックベリーみたいな顔のやつ。Kダブシャインみたいな顔の子に。キリスト坊や。店をめちゃくちゃに汚すけどなんとなく楽しい軍団、喋らないけどじっと何かを見ている優しい子、いやなところだけを見ている子。ギャグセンスがいい子。長年いい付き合いだったけど万引きしちゃった子、また店に来てくれる様にするのがひと苦労。お金があった時は良かったけど無くなってからどうにかお金を手に入れようと何でもする子。とにかく誰でも来る。もっと思い出そうと思えばいくらでも書ける。はじめ店の文句言いながら入って来てヤな感じだったけど、話すうちにいいやつになったりするなんて事はしょっちゅうある。1日に2、3回ある事もある。

とにかく、その一人一人をいい子か悪い子か考えてたら駄菓子屋はもうとっくに疲れてやめてただろうし、「あんな子もこんな子も全員ひっくるめて、子供は無邪気な方がいい」なんておおらかな気持ちでやってたらやってたで、切りのいいところで「やるだけやりました!」「思い出がいっぱい。ありがとうございます。」「次のステージに進みます!」「カレー屋になります」とかもっともらしい事を言ってやめてたと思う。

好きや嫌いのどっちでもないのだけど。「普通ですよ」とかしらけた事を言う気はさらさらないし、好きな方だとは思う。

とにかく距離が近すぎて、子供が好きか嫌いか考える隙間がない年月。疲れるほど考えてばかりいたほどではないのだけど、考えるのが面倒くさくなっちゃって森の切り株に座ってる感じ。

駄菓子屋をやめる頃に、「いいやつも沢山来たけど、やな奴も結構来たなー」と笑えればいいと思っているけど、その頃にはもっと別な事を感じて別な風に云ってるかも知れないし、答えはまだ先です。ボケが先に来て答えも何もないなんて事も全然ありそう。おッス。

では、なんで俺が駄菓子屋をやってるんだろうって事なんだけど、ちゃんとしたきっかけがあるんで書いてみますね。たまにゆっくり飲んでる時に聞かれて話したりしてる話ですが——。

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ヨシギノプロのタバコ代として――。

じょんが駄菓子屋店主として令和前に書いてた日記。随時更新。

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